自然人類学 第8回 講義資料
イスラエルで出土した埋葬されたネアンデルタール人の化石
・最初の人間(Homo sapiens)は、ネアンデルタール人に代表される旧人の仲間だと考えられてきた
・旧人は、20〜3万年前に生息していたと考えられている
・旧人(Homo sapiens neandeltharensis)と現代人(Homo sapiens sapiens)は亜種の段階で分けられることがある
(東京大学総合博物館HPより)
シリアで出土したネアンデルタール人のこどもの化石
・旧人のうち、ヨーロッパから中東にかけていた人たちをネアンデルタール人と呼ぶ
・現在では、ネアンデルタール人をHomo neandeltharensisとして別種扱いすることもある
(東京大学総合博物館HPより)
ネアンデルタール人と現代人の頭骨の比較
・旧人(ネアンデルタール人)の特徴は、地域変異が大きいことである
(片山一道他著「人間史をたどる:自然人類学入門」より)
中東で発見された同時代の旧人(右)と新人(左)の頭骨
・従来は、新人(現代人)は3万年前に現れたと考えられていた
・代表的な新人は、クロマニヨン人など
・最近では、現代人の起源は10万年以上前に遡るという説が出てきている
多地域進化説とミトコンドリア・イブ説
・多地域進化説(上)では、世界各地それぞれの地域で、原人から現代人(Homo sapiens)が進化したと考える
・各地の化石に時代を超えた共通性が認められるというのが根拠の一つ
・ミトコンドリア・イブ説(下)では、現代人の起源を約20万年前のアフリカと考え、その後世界各地にこの人たちが進出していったと考える
・その根拠は、現代人のミトコンドリア(母系遺伝)の分析から「すべての現代人のミトコンドリアは約20万年前にアフリカにいた一人の女性に由来する」と結論
・現代人の祖先が原人や旧人を滅ぼした?
(片山一道他著「人間史をたどる:自然人類学入門」より)
日本人の起源
・最も古い「確かな」人骨化石は港川人(沖縄県、1万8000年前、新人)
・浜北人:1万8000年前、静岡県浜北市(現浜松市北区)で出土
・「最も古い」人骨化石:沖縄県那覇市山下町第1洞穴人(約3万2000年前、新人)
・白保竿根田原洞穴(しらほさおねたばるどうけつ)で2007〜2009年に発見された人骨
約2万年前:人骨の年代を直接測定したものとしては、日本最古
港川人や浜北人は、一緒に出土した遺物の年代推定による
・一時期は原人がいたと考えられていたが、石器が捏造されていた
・ただし、戦前に原人のものらしい化石が見つかっており、「明石原人」と呼ばれている
ホミニゼーション(ヒト化・人類化)
・ヒト上科からヒト科が生み出されてきた過程
・人類学の大きな課題の一つ
直立二足歩行の特徴
・膝を伸ばしてまっすぐにすることができる
・大腿が膝に向かって内側に傾斜しているために、身体の重心を歩行のそれぞれの段階で大きく横に移動させる必要はない
・高速歩行の際には四足歩行者と比較すると速度は遅くエネルギー効率も悪いが、遅いペースではエネルギー効率は四足歩行と同じかむしろそれ以上によい
↓
・直立二足歩行は長い距離をゆっくりと移動するのに向いている
類人猿、猿人、人間の下肢
・左から、人間、猿人、類人猿の下肢
・人間の大腿骨は内側に傾斜しているのに対して、類人猿の大腿骨にはそうした特徴は見られない
・このために類人猿が二足歩行する場合には、よたよたと歩くことになる
(R・ルーウィン著「人類の起源と進化」より)
骨盤の進化
・左から、テナガザル、チンパンジー、ゴリラ、人間の骨盤
・人間の骨盤は、直立二足歩行の獲得によって幅広になっている
(京都大学人類学研究会編「目で見る人類学」より)
チンパンジー、猿人、人間の寛骨
・左から、猿人、チンパンジー、人間の寛骨
・寛骨は、骨盤の一部である
・チンパンジーの寛骨に比べ、猿人や人間の寛骨は幅広になっている
(R・ルーウィン著「人類の起源と進化」より)
直立二足歩行の不利な点
・立ち上がることによって、過度の重力が下半身にかかり、内臓はより強く重力の影響を受けるようになった
・このため、ぎっくり腰、痔、貧血、胃下垂になりやすい
・また骨盤の構造から産道が狭くなり、難産になりやすい