チンパンジーの肉食文化

五百部裕

要約

狩猟・肉食行動は、人類進化に大きな役割を果たしたと考えられてきた。人間以外の霊長類も肉食するが、現生霊長類の中で最も頻繁に肉を食べているのは人間である。人類の祖先は、いつどこで頻繁に肉を食べるようになったのか? この問いに答える有力な方法の一つが、類人猿と人間の狩猟・肉食行動の比較である。チンパンジーの狩猟・肉食の証拠は多くの調査地で得られており、この行動は生息環境を問わず一般的な現象である。彼らの狩猟対象は、霊長類であることが最も多いが、調査地間の違いもある。チンパンジーは、同じ哺乳類がいたとしても場所によって狩猟したりしなかったりする。これは、どのような哺乳類を肉として認識するかが、それぞれの場所で共有され受け継がれてきた結果だと考えられ、そこに彼らの食文化が見て取れる。人間とチンパンジーに見られる狩猟・肉食行動の違いは、それぞれが歩んできた進化の道筋の違いに対応していると考えられる。

遺伝, 53(1): 26-30 (1999)


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