椙山女学園大学 国際言語コミュニケーション学部

 


私はラテン語

石川 勝二

私はラテン語です。私のことを世間では“死語”なんて言っていますが、どうしてどうして、目立たないだけでいろんなところで使われています。

"巨人対阪神"を表す"Giants vs. Tigers"のvs.はラテン語のversus(副詞 〜に面して)の略です。

アメリカはIT企業がひしめくヴァージニア州。この州名はかの「処女王」エリザベス1世に因んだことは周知の事実です。ヴァージンは乙女のこと、その語源はラテン語のvirgoですが、なぜがvirgoがvirginになるのか、それはラテン語文法を勉強すればすぐに分かります。

こういう例は枚挙にいとまありません。皆さんが外国旅行をしたとしますね。旅行社から日程表をもらって、そこにitineraryという言葉を見たことはありませんか。その語の語源はやはりラテン語のiterです。itineraryとiterはずいぶん違う言葉に思えますが、両者の関係もラテン語文法を勉強すれば分かります。

ところでドイツ語を学んだことのある人なら誰でも、名詞に性があって、しかも男性名詞、女性名詞はおろか、中性名詞まであって、ある名詞がどの性に属すか、いちいち覚えなければならず、うんざりした経験をお持ちでしょう。ラテン語も同様です。

その起源は、原インド・ヨーロッパ語族—ラテン語もその子孫の一つです—にまで遡るのです。フランス語には中性名詞はありませんが、男性名詞と女性名詞はありますので、これも覚えなければなりませんね。

もともと名詞の性のない日本語を母国語とし、名詞の性を意識しなくなった英語をもっとも親しみのある外国語とする私たち日本人にとって、現在のヨーロッパの諸言語の基礎であるといってもよいラテン語を学ぶことは、大変意義深いことではないでしょうか。

そこにヨーロッパとは何かが見えてくるかも知れませんね。