建築歴史意匠

1:フランスの近代建築史

  修士課程、博士課程ではフランスにおける1920-30年代の近代建築を専攻しました。とりわけ、当時の代表的な近代建築家の一人、ロベール・マレ=ステヴァンス(Robert Mallet-Stevens, 1886-1945) の作品を研究対象とし、その成果を学位論文「建築家R.マレ=ステヴァンスの建築理念と造形手法に関する研究」(指導教員:小林克弘教授、東京都立大学H14年7月18日)にまとめました。

 2014年には、広島大学の千代章一郎先生の監修で、マレ=ステヴァンスと同年代にフランスで活躍したピエール・シャローの展覧会の図録の仏文翻訳を手掛けました。

 

2:建築設計

  東京都立大学学部・大学院在学中、小林克弘教授の指導のもと研究室メンバーと共同、そして個人でも設計競技に参加し、そのうちのいくつかは入賞を果たしました。 椙山では、H20年度3年後期科目空間計画設計実習で、第4回須山建設がんこおやじマンションコンクールに参加し、指導した5チーム中4チームがグランプリ、準グランプリ等に入賞しました。

 私自身は2000年代から研究に重心をおいており、コンペからは遠のいていますが、学生のコンペ参加は授業外でも相談にのるなど積極的に支援しています。

 

3:名古屋の建築やデザインの歴史

  東京生まれの東京育ちの私は2006年9月に名古屋に転勤して以来、この土地の風土、文化、食についての発見を日々楽しんでいます。東海地方独特の建築やデザインに関する卒業研究を積極的に行っていきたいと考えています。

 例えば、H19年度は愛知県最古のキリスト教教会のファサードデザインの変遷に関する研究、H20年度は、愛知県の銭湯にあるタイルアートに関する研究、H21年度は第二次世界大戦前と戦後に愛知県を中心に活躍した建築家・丹羽英二の3作品とアール・デコに関する卒業研究を指導しました。H26年度の名古屋市内の商店街の寂れに関する研究では、寂れを感じさせる要素を抽出し、どこに寂れが存在しているのか明らかにしました。

 

 建築計画

1:フランスの団地更新手法・マンション管理・住宅問題

  2003年12月東京都立大学(2005年4月首都大学東京に改称)大学院工学研究科建築学専攻4-MetセンターCOE研究員就職後は、「団地型集合住宅トータルリモデル」プロジェクトに配属され、主に「フランスの団地更新事業の事例研究」を担当しました。首都大在職時の研究成果は、建築学会計画系論文集や「団地賦活事例集-フランス・日本-」(首都大学東京4-Met Center、2007年)にまとめられています。

 近年のフランスの団地更新手法のなかで、もっとも重要な概念・手法のひとつは「レジデンシャリザシオンrésidentialisation」で、その効果を今後も引き続き検証していきます。また、H23-25科研費(基盤C)で『フランスの持続可能な地区整備事業エコ・カルティエと団地更新に関する研究』を行いました。 ここ10年近く、フランスの社会住宅団地の改修について研究してきましたが、集合住宅つながりで、フランスのマンション管理や空き家問題についても取り組んでいます。H30-33科研費(基盤C)で『フランスのマンション管理の実態に関する研究』を手掛けます。

 団地や集合住宅を長く使い続けるためにどうしたらよいのか、ハード面ソフト面から、フランスの経験を日本に紹介していきたいと考えています。

 

2:小児科病棟の付き添い家族のための空間

 近年個人的な経験から、小児科病棟内に患児の家族のための空間が必要だと気づきました。乳幼児にとって母親の存在が重要であることは誰もが理解していることと思いますが、病気の時は離れていてもしょうがないのでしょうか?私は病気の時こそ、子どもの治療・回復に母親や家族の存在が重要なのではないかと考えます。医療的なニーズを妨げることなく、家族が患児に寄り添える空間づくりを考えたいと思います。

 その端緒としてH26年度卒業研究で、病児家族の滞在施設であるファミリーハウスにおける、寛ぎのインテリアの要素の抽出に取り組みました。そして、H27-28科研費(挑戦的萌芽)で『患児に付き添う家族のストレスと病棟内の生活空間に関する研究』を進めました。

 おかげさまで病院、大学の研究者、設計者など多くの方にご協力を頂き、この分野の研究も進めることができています。現在、ある病院の小児科病棟の看護師さんの研究チームと、入院時に役立つ患児家族向け絵本を制作中です。病院内のユーザー目線のインテリアデザインやデザインで私がお手伝いできそうなことがありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

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