超破格青春18きっぷの旅

東京-名古屋 |飯田線

「青春18きっぷ」というのをご存知だろうか.JRグループが鉄道ファンのために、採算を度外視して提供しているJR全線の普通列車が1日乗り放題の券だ(快速を含む.グリーンは追加料金で可).
春夏冬の休暇期に限定期間(3/1-4/10,7/20-9/10,12/10-1/20)に使用できる.限定といっても,1年間で計130日間(1年の1/3)も使えるのだ.各期間内で5回使えて(1枚のきっぷで5回押印される),11500円(使い終わる前の分はチケット店で買い取ってくれる).JR駅のみどりの窓口で買える(金券ショップだと100〜200円くらい安く買える).発売期間は利用期間の前にずれるので注意!

この青春18切符を使えば、新幹線で片道10000円以上かかる東京ー名古屋間が、なんと1/4以下の2300円ですむ。1往復で15000円も浮くのは嬉しい.そのかわり、往復で8時間ほど余分にかかるが.まぁ,時給1900円で好きな本を読んでいるだけのバイトをしていると思えば我慢できないこともないかもしれない。
夏休みなどの時間がゆっくり使える時は、一日を移動のためだけに使うつもりで鈍行の旅もいいものだ。東京と名古屋の間の長い距離を実感できるので、いやでも旅行気分を味わえる。

こんな貧乏臭く・忍耐を要する鉄道旅行ができる人であれば、その人は「青春」なのだといっていい。だから「青春18きっぷ」は実年齢には制限がない。


まずは東京ー名古屋間の旅

海コース:東海道線

東京ー熱海間(104km)と豊橋ー名古屋間(72km)は快速に乗れ、軽快で楽。そのかわり静岡県内は東端の熱海から西端の新所原(しんじょはら:浜名湖の西)まで178km間完全無欠の各駅停車しかない.静岡の東海道線の駅はすべて停るという、静岡ファンにはたまらない旅だ(しかも最近,「愛野」という駅が増えた)。下図○印の駅は乗り換えポイント.

所要時間は快速を利用すれば最短で5時間40分。たとえば下りの場合,12:40東京発の快速アクティー熱海行きに乗れば、熱海・浜松の乗り換えで18:20に名古屋に着く。乗り継ぎ駅では、ホームの向かい側に乗り換える電車が発車しようと待っているという接続の良さで、駅弁を買う暇すらない(逆コースでもほとんど同じ)。

それなら駅弁は東京・名古屋で買えばいいかもしれないが、それは新幹線でやっている。どうせなら、途中駅で買いたい。熱海でアジの干物にみかん、掛川で茶、浜松でウナギ,豊橋でチクワといきたいが、通学や買物客ばかりの車内ではちょっと弁当箱も開けにくい(18きっぷ者(もの)とバレてしまう)。

電車の本数は多いので,いっそのこと途中下車して、次の便が来るまで駅近くで食べてもよい(浜松のウナギがお勧め)。私は金谷(大井川鉄道の発駅で,東海道線では珍しい山の中の風情)でむしょうに降りたくなる.

もともと1分1秒を気にする道行きではない.だから乗り継ぎ駅では,すでに乗客がぎっしり詰まっている接続便には乗らず,1本後(といっても10分後かそこら)の始発にした方が確実に坐れる.
名古屋からの上りなら,12:20の快速に乗り,終点浜松へ(豊橋で乗り換えないので楽).しかし,そこで待っている満杯の熱海行きには乗らず,10分後の沼津行きにすれば,その間に改札を出て鰻弁当(漁協のが800円と安くておいしい)を買い戻り,4人掛けの席にゆっくり足を伸ばせる.(ただし前4両に乗る事。後3両は静岡止まり。この文もそのガラガラの便にのってパソコンで打っている.ただ新幹線と違って揺れが大きいのでずっと打っていると気分が悪くなってきた.やはり鈍行列車の旅はのんびり車窓の風景を眺めるに限る). 沼津で始発東京行きに乗り換えて、次第に混んでいく電車で東京に着くのは18:25.
浜松から熱海方面への電車は、車輌編成をチェックしよう。3輛編成だとロングシートのトイレなしの最悪パターン。4輛以上ならボックスシートにトイレ付。

景色のポイント

東海道線の景色のポイントは海.小田原ー湯河原では相模湾(天気がよければ伊豆大島・利島も見える)、由比では駿河湾(奥に西伊豆が島のよう)、蒲郡では三河湾(奥に渥美半島)が望める.中でも圧巻は根府川付近の足元から目の前に視界いっぱいに拡がる相模湾だ。冬なら反対側に富士山が東京から出迎えて、浜名湖までずっと見送ってくれる(浜名湖の眺めに関しては,湖上を滑るように走る新幹線の方が好き)。
ちなみに新所原(静岡県湖西市)と二川(愛知県豊橋市)の間に,いやおうなく目につく岩山は「立岩(たていわ)」という(写真).硬い岩だけが残った残丘であることがわかる.目を凝らすと岩登りに興じている人が見えるかもしれない.この立岩は下りでは愛知県に入った目印,上りでは愛知を出る目印となる。といっても正確な県境は、立岩から浜松寄り、新所原駅のホーム下を流れる側溝のような小さな川(境川という)。つまり新所原駅は二つの県をまたいでいる珍しい駅。

東京・横浜と、静岡,浜松・豊橋あたりの中高生の服装・雰囲気の違いや首都圏と静岡や愛知の乗客のしゃべり方の違いなどを観察するのもおもしろい(浜松近辺だとブラジル系の乗客もめにつく)。

車内には、同じ「18きっぷ」での旅人がいるはず。たいてい、でかいバッグをもち、乗車すると時刻表を取りだして凝視する。大判の時刻表を見るのが楽しくてにこにこしている鉄道旅行マニアもいる。
そういえば, 18きっぷの旅をするとき思うことだが,列車の時刻だけでなく,列車の車両数や座席のタイプ,トイレの有無などの情報も時刻表にも載せてほしいものだ(時刻表とは別の専門誌はあるが).なにしろ静岡県を走る便にはトイレなしの列車もある.また,名古屋ー豊橋間の快速以外は,通勤型のロングシートの車両に乗る可能性は大.そうなると東京駅から豊橋までの間,旅情もへったくれもなくなる(駅弁も食べにくい).

ちょっと変った体験をしたい派には、国府津で御殿場線に乗り換えて、旧東海道線の御殿場経由で沼津に出てみるのもいい。山北付近の山峡のローカル線の風情は捨てがたい。遠回りするようで電車1本分のロスで済む。富士の裾野を通るので、冬の方がいい。


実録 東京から名古屋へ 2002 8/20

自宅から5分の最寄り駅「西日暮里」で18きっぷに5個目の押印.午前11時すぎのホームに立てば,道灌山の我が里の鎮守・諏方(すわ:諏訪でない)神社の森が台風一過の残暑を和らげている(写真).ここから東京駅までは13分(残念ながら快速運転する京浜東北線は停まらない)

1.東京ー熱海

11:33発快速アクティ熱海行きは,後ろの車両ほど空いている.車両は対面席のあるタイプ(セミクロスシート)で,日差しと眺めを考慮して進行方向左側にすわる.東京駅ではまだ空席もあったが,新橋(11:36)から横浜(11:58)の間で満席になる.だからアクティでは昼食はとらない.茅ケ崎(12:23)・平塚(12:28)で結構降り,以降は相模湾も見えだして,のんびり行楽気分になってくる.国府津(12:39)あたりは海に近い住宅地で定年後の住居にしたい感じ.
小田原(12:44)で乗り降りがあり,さあいよいよ本線のクライマックス,相模湾大接近帯に突入.通過する根府川駅手前では足元から波が砕ける(写真).その右には箱根の山塊と伊豆の山が続き,旅情をかき立てられる.このまま伊豆にでも行きたくなる。トンネルが多くなって,終点の熱海に13:05に着く.

2.熱海ー豊橋

ホームの向かいに浜松行きが待っている(下写真).13:14発の浜松行きは,セミクロスシートの3両編成で最後部は新聞などの荷物スペースになっており,ぐっとローカルな雰囲気に.客層もアクティの旅行客に替わって地元の買い物・通学客となる(何人か18きっぷ者がまじる).

空席に荷物を置いてホームで駅弁を買う(名物はこゆるぎ弁当).駅弁をかかえて10分ほど待っていると,次の熱海止まり(東京発時はアクティより先だった)が着き,車内は満席.立つ人もでる.私は三島で降りるので駅弁は開かない.

東海道線最長の丹那トンネルを抜けて2駅目の三島(13:28)で、駅弁と大きなバッグををかかえた私はさっさと降りる.私を18きっぷ者の一人とにんらんでいた周囲の客はさぞ驚いたことだろう。確かにこのまま浜松まで行った方が早いのだが,13:40の三島始発の豊橋行きに乗れば,終点まで空いた列車でのんびりできるのだ(浜松行きは混んでいるし,静岡でまた混むし,浜松では乗り換え先の電車がまた混む)

以前は三島で昼食として駅そばを食べていたが,熱海で幾種もある駅弁を買って豊橋行きのガラガラの車両で食べたほうが味覚的にも旅情的にもいいことに気づいた.

豊橋行きはセミクロスシートの5両編成でトイレは最後尾.なぜか窓は開かない.それに窓の外がちょっと汚れている(たいていの列車がそうだ).発車したと思ったら次の沼津(13:34)で9分間停車.三島より沼津の方が売店の品目が多いので,退屈しのぎのスナック菓子やホットドッグなどを買い込む(こゆるぎ弁当は小ぶりなので追加が必要).車内は空いているから,日差しが強いとついついビールを買ってしまうときもある.
愛鷹山の山麓をゆっくりまわって富士川(14:18)を渡り,由比海岸で海に接近する.台風接近時は大波のしぶきが迫ってくる所.静岡(14:48)ではいつもは乗ってくる人が多いのだが,前の浜松行きに吸収されたためか,座席は余ったまま.そしてまた駅ごとに減っていく(写真).

大井川を渡ってぐんぐん登りになり,山の中の風情がある金谷(15:21).ここから菊川までは茶畑が並ぶ牧ノ原台地の上の川沿いで茶畑を通る,沿線一番の眺め.城が再建された掛川(15:35)をすぎると平野となって,天竜川を渡ると,アクトシティのビルが見えてきて浜松(16:01).

ここで乗り換えずにすむから楽.けっこう乗ってくる.弁天島(16:16)を過ぎると浜名湖にさしかかるが,北にひろがる湖の眺めは新幹線の橋梁が邪魔.鷲津(16:23)を過ぎて浜名湖が奥にひっこむあたりの立体的風景もいい.県境の低い山塊が迫ってきて,新所原(16:28).ここを過ぎると愛知県で,すぐに目を引く岩山・立岩が目の前をすぎる.岩屋観音のある小山で山地が尽きると,平野となって長い各駅停車の旅が終わる豊橋に着く(16:38).

3.豊橋ー金山

豊橋では階段でホームを移ると,特別快速大垣行き(16:50)が待っている.この列車は2人掛けの席なのだが,着いたばかりなようで,移動式の背もたれが進行方向になっていない.それを乗客がなおして座る.特別快速は,名鉄の急行に対抗して設けたらしく,席も所要時間も優遇されている.

蒲郡(17:00)付近で左に三河湾が広がるが,手前の風景が工場や住宅が多くて風情には欠ける.山峡を抜けて濃尾平野に入り,矢作川を越えると安城(17:15).ここで通勤帰りの客が乗りこんで満席となる.刈谷(17:21)で更に混み,名古屋まで減らない.

私は名古屋まで乗らずに1つ前の金山(17:34)で降りる.ここで中央線(ロングシート)に乗り換え(17:38),2つ目の千種(ちくさ)で降りる(17:44).ここでJRとお別れ. 地下鉄東山線に乗り換えるためだ. 西日暮里から千種まで7時間弱の18きっぷの旅は終わる.


山コース:中央線

東京と名古屋を結ぶルートは東海道だけではない.甲州街道と中山道を使った内陸の中央線ルートもある。こちらは静岡の替わりに長野と山梨を通る.

中央本線には東線(新宿ー塩尻:JR東日本)と西線(塩尻ー名古屋:JR東海)があるというのは時刻表を見ればわかるが、それらを通して走る列車はない。

さて,中央線の売りはなんといってもベスト1の山岳展望勝沼ぶどう郷から一望する南アルプス.
甲府盆地からの裏富士。韮崎から小淵沢までは,左にフォッサマグナ上にそそり立つ鳳凰・甲斐駒・北岳.右に奥秩父から野辺山高原の裾野も高い八ケ岳と,山好きなら体が2つほしくなるほど両側に「日本百名山」が展開する.諏訪から塩尻までは北アルプス(槍・穂高)も垣間見える。上松付近から一瞬顔を出す木曽御岳.木曽路随一の奇勝寝覚ノ床(ねざめのとこ)は車窓から丸見え.美濃・木曽路から見上げる中央アルプス.東濃(特に釜戸ー武並間)の田園風景もいい。日本アルプスに富士,御岳,八ケ岳と超一流の山岳が次々と現れるのだから贅沢すぎる(ちなみに富士そのものの眺めは,裾野から丸見えの東海道線が勝つ).

また東海道線では大きな川(矢作川,天竜川,大井川,安倍川,富士川,酒匂川,相模川,多摩川)を次々と鉄橋で渡るが,中央線は川(土岐川,木曽川,奈良井川,釜無川,桂川,南浅川)に沿って走る.その風情も捨てがたい.どうせ一日を移動に費やすなら,たっぷり旅行気分にひたれるこっちのルートもおすすめ.ちなみに東海道線は海沿いなので最高地点も金谷の海抜90m程度。それに対して中央線は、東線の信濃境ー富士見間、および西線の薮原ー奈良井間の二ヶ所で海抜1000mに届かんとする、小海線(清里・野辺山を通る)に次ぐ高さの高原列車なのだ。

東京からは実質は高尾発になるので,名古屋発の方が列車の便を確認しやすい.名古屋からだと通勤電車で多治見まで行き,そこでセントラルライナーに乗り換える(多治見以降からは300円が無料に).東濃の田園風景を楽しんで終点の中津川(ここで駅弁か駅そば).乗り換え客がホームにたまっている.特急をやりすごし,始発の松本行きは二両編成なので混む.進行方向左側(谷側)の席を確保する(右側は山側なので眺めがない).

塩尻または茅野の間で1時間近く空きがあるので,塩尻駅近くで信州そばを食べてもいいし(おいしい),上諏訪ならホームに足の温泉に入れる(前は本当に入浴できたのに….せっかくだから上諏訪温泉片倉館まで足を伸ばす).そして終点高尾で通勤電車に乗り換える.行楽シーズンの土・休なら,小淵沢で始発の2階立て快速に乗り換えれば新宿まで旅情を保てる.こっちは進行方向右側の席が南アルプス・富士の展望にいい.

以前は結構接続が良くて片道7時間ほどだったが,1998年のダイヤから JR東日本内(塩尻- 小淵沢間)の接続が悪くなって,塩尻ー茅野のどこかで1時間待たなくてはならない.その分途中下車して信州の街を歩いてみよう.


18切符の更なる利用

18切符は1枚で5回分もあるから,純粋な日帰り列車旅行に使うのもいい.ただし普通列車の便が実用的(頻繁で長距離)なダイヤになっている路線は限られる.

実用的な路線:東海道・山陽本線,宇都宮・東北本線.

往復なら片道100km以上ではじめて割安となる.ローカル線の旅でしかも一周するルートに向いている.

東京始発着


名古屋発着

飯田線の旅:名古屋ー中津川ー塩尻ー岡谷ー豊橋ー名古屋(木曽谷と伊那谷の2つを縦断する豪華な旅.1日1本の岡谷発豊橋行きに乗る).2001年4/1に挙行.下に紀行を載せた.


何のため? 飯田線乗り通し!

野県のほぼ中央の辰野(たつの)から愛知県の豊橋までをむすぶ飯田線は,全長196kmに駅の数がやたら多くて92もある長大なローカル線 .現在は始発駅が諏訪寄りの岡谷になったので走行距離205km(駅の数は豊橋寄りの下地・船町の2駅は止まらないので92と変わらず).全線通して乗れば直通でも6時間かかる(東京ー名古屋間の東海道線普通と同じ).これを走破,いや,ただ乗っているだけだから「乗り通し」するのは,まさに「青春18きっぷ」がこの世にあればこそ.なければ,絶対やる気がしない.

ただし,これを18きっぷでやるには岡谷までと豊橋から先も普通列車でないといけない.そうすると名古屋起終点でも11時間も鈍行列車に乗っていることになる.でもそれでたったの2300円だ.そういうわけで,用もないのに中央西線・飯田線の全線,それに東海道線の一部を乗り通してしまった.まるで鉄道マニアではないか.これが18きっぷの魔力か.

田線はおおまかに言えば天竜川(諏訪湖畔の岡谷が川のはじまり)に沿っている(愛知にはいってからは豊川・中央構造線に沿う).現在では全線走る便は数えるほどしかなく,たいてい飯田線の中ほどの「天竜峡」駅が中継点になる.

実際この「天竜峡」を境に北の伊那谷の広い眺めから,南の天竜川の峡谷とトンネルの世界に入れ替わる.ここを境に,飯田線の北半は,中央アルプスと南アルプスに挟まれた伊那谷を縦断するので,車窓からのアルプスの眺めが第一級.南半は三遠南信の山村的雰囲気がどことなくする,という感じに見事に風景が分かれるのだから,6時間も乗っても飽きない…でも実際にはこの6時間ではすまないし….

岡谷発12:30の豊橋行きにのれば,乗り換えなしなので(どこにも立ち寄れないが),100%車窓の旅だ.(トイレは車内にある).

古屋からだと,乗り換え駅は中津川,塩尻,岡谷,それに最後は豊橋だ.上の便に乗る計画だといずれの駅でも乗り継ぎがよくて5分程度しか待ちがない(すでに列車は待っている).駅弁や飲み物は急いで買った方がいい. 私は岡谷で「山菜ちらし」と「野沢菜おやき」を買った(信州に行ったら必ず野沢菜おやきを食べることにしている).

車両は始発の岡谷では5両もあって驚くが,後2両はすぐの伊那松島で,更に1両は飯田で切り離されるので.前2両に乗ること.駅での待ち時間もこの2駅以外はない.それにほとんどが無人駅だ.豊橋手前の新城(満席になる)では特急を15分も待つが.

席は東(南アルプス)側か西(中央アルプス)側のどっちか迷うところ.しかし実際乗った印象では,岡谷から天竜峡まで,すなわち北半は東(左)側,天竜峡以南は西(右)側がいい.なにしろ伊那谷の主(ぬし)は南アルプスの仙丈岳(3033m)だということがわかったから.

仙丈岳は,伊那松島の手前から,途中で前山に隠れたりはするものの,天竜峡までずっとその雄大な山容をあらわにしている.それに仙丈以外にも,甲斐駒(東駒:2966m)から白峰三山(3192m),塩見岳(3047m),赤石岳(3120m)と南アルプスの主峰が延々と居並ぶ.特に駒ケ根ー伊那大島(左写真)の間からの眺めがいい.

それに対して中央アルプスは,南アルプスよりも窓からの距離がぐっと近いとはいえ,最高峰の駒ヶ岳でさえ2956m(しかも見えない)で,他はもっと低く,それに山脈が一つの屏風のようで個々の山の起伏(個性)が小さい.またアルペン的な部分の長さが短いのも決定的に不利.とうわけで展望の主役は南アルプスに軍配が上がってしまうのだ.


南アルプス塩見岳(やや左)

中央アルプス

ちなみに中央アルプスの眺めは伊那谷(飯田線)よりも木曽谷(中央西線)の野尻駅付近からが一番気に入っている.木曽側からの中央アルプスは「山が立っている」といわれるようにすさまじく急峻にせり上がって見える.三の沢岳や麦草岳などの高い衛星峰が木曽側にあるのも風景を複雑にしているし.

竜峡からは,山はぐっと低くなるものの,両側に迫ってくるので,ゆったりしていた天竜川が急に渓谷の様相を帯びる.下流なのにここからがむしろ上流の雰囲気だ.今まで眺めのよかった東側は山腹側になるので眺めがなくなる.

静岡県の 佐久間の次の中部天竜(ちゅうぶてんりゅう.本当は「なかべてんりゅう」というべき)から先(天竜川から離れる)は渓谷もなくなり平凡な風景.しいていえば湯谷温泉までの板敷渓谷の岩盤が東側に見える.あと長篠城跡や古戦場跡は西側に通る.それ以降は町中に入るし乗客も増えるので旅情はなくなる.

天竜峡から先の山峡地帯はほどんど乗降客はないが,湯谷温泉で客が増え,新城でほぼ満席となった.

本当は豊橋から北上した方が風景の変化が盛り上がるのだが,塩尻での接続が悪いので18きっぷ,すなわち日帰りでは無理.

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