収束の式 ・渦度の式
収束式=(u2-u1)/Δx+(v2-v1)/Δy 渦度式=(v2-v1)/Δxー(u2-u1)/Δy
この二つの式は、形がとても似ている。どうやらシンプルな収束の式から、概念的に込み入った「渦度」のアイデアが発見されたように思える。だからいっぺんに理解しよう。
まず前提
1.風は強さと方向を持ったベクトルである。任意の風向の水平風(たとえば南西風)は、水平面を構成する2つの次元、東西方向(西風)成分と南北方向(南風)成分とに分解できる(右図)。
したがって、東西・南北両方向の成分の合成(ベクトル)によって任意の方向の水平風を表現できる。
これは山の滑昇流ベクトルが水平風と鉛直風との合成で表現できるのと同じ。
すなわち、水平風=東西成分+南北成分
だから、南西風は西風成分と南風成分とが等しい風、北北東風は負の西風成分より負の南風成分が大きい風と表現できる。
2.風速とは空気の移動量なのであるから、二点間で測定された風速の差は、同じ空気がその二点を通る時間の変化量と解釈できる。つまり空気の移動の加速・減速と考える。
風速差=加速・減速量
この前提を使って式を言葉に置き換えてみる。
●収束式
(u2-u1)/Δx+(v2-v1)/Δy
=任意空間(たとえば1km四方)における、東西二点間(Δx)の西風成分(u1,u2)の風速差+北南二点間(Δy)の南風成分(v1,v2)の風速差
但し、西風(空気の西への移動)成分の差は、時間差に対応しているから、風下の東点から風上の西点を引く。南風(空気の北への移動)成分についても風下の北点から風上の南点を引く。上の前提1,2より、
=空間の任意の風向の風速差(変化量)。
符号が+なら、方向はどうあれとにかく水平風速が増大(加速)している(→ →→)=発散
符号が−なら、水平風速が減少(減速)(→→ →)しており、空気はその分余分にたまり(収束)、鉛直方向に流れたとみなせる。
●渦度式
(v2-v1)/Δxー(u2-u1)/Δy
=任意空間における、東西二点間の南風成分の風速差ー北南二点間の西風成分の風速差
=西風成分を左(北)に曲げる強さー南風成分を右(東)に曲げる強さ
=空間の任意の風向の風を左右に曲げる強さ。
あとはその左右の方向が符号で表現できればよい。
上式をξ=V−Uとすると(式を使ってゴメン)、 V>U(ともに正の時)、あるいはV<UであってもVが負なら、ξ(渦度)は正(左回り)となる。
もちろんU=Vなら左に曲げる強さと右に曲げる強さが等しいので渦度ξ=0。
上の説明から、渦度式は何通りもの表現(北風成分を左に曲げる要素を使うとか)が可能であることがわかるが、上式であれば、収束式と同じベクトル構造で渦度が出せるメリットがある。
収束は風速の変化であり、渦度は風向の変化を表現していることがわかる。