霊長類に見られる被食−捕食関係 (6/6)
6.さいごに
- このようにアカコロブスの生態や社会、行動にはチンパンジー狩猟の影響が色濃く現れています。ただこの研究は緒に就いたばかりでまだまだ不明なことも多いのです。
- 短期的には警戒・防衛戦略を取っているアカコロブスは、より長期的にはどのような戦略を用いているのか? 例えばアカコロブスはチンパンジー狩猟に対抗して、群れの大きさや構成を変えているのか? あるいはアカコロブスの戦略に対抗してチンパンジーは狩猟方法を変えるのか? こうした問いに答えることは、単にアカコロブスとチンパンジーの関係に留まらず、広く生物一般の被食−捕食関係の理解に大きく貢献すると考えられます。
- 野生下で捕食者と被食者の双方を詳細に観察でき、かつ捕食の事例を大量に収集できることは多くはありません。その点アカコロブスとチンパンジーの関係は、私たちにとって貴重な存在であると考えられます。いずれの問題も短期間の調査で解決を見るようなものではありませんが、今後もチンパンジー研究者と協力しながらこの研究を続けていくことで、その答えを見つけていきたいと考えています。
参考文献
- Uehara, S. 1997, Primates 38: 193-214.
- 五百部裕 1997, 霊長類研究 13: 203-213.
- 五百部裕 2000, 霊長類生態学, 杉山幸丸編著, 京都大学学術出版会, pp.61-84.
- 保坂和彦 1998, 博士学位論文, 京都大学.
- Stanford, C. B. et al. 1994, Amer. J. Phys. Anthropol. 94: 213-228.
- Boesch, C & Boesch, H. 1989, Amer. J. Phys. Anthropol. 78: 547-573.
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霊長類に見られる被食−捕食関係 終わり
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