コロブスを襲うチンパンジー (3/5)
3.カリンズ森林
- 左の地図に示したように、カリンズ森林は、ウガンダ西部、クイーンエリザベス国立公園に隣接して広がっています。ここでは、1992年以来京都大学の橋本千絵さんらが、チンパンジーやサルの調査を行ってきました。カリンズには、6種の昼行性霊長類(チンパンジー、アカオザル、ブルーモンキー、ロエストモンキー、アビシニアコロブス、アヌビスヒヒ)の生息が知られています。そしてチンパンジーが、アカオザルとブルーモンキーを食べているところが橋本さんらによって観察されています。しかし残念ながら、これまではチンパンジーが狩猟を行う場面は観察されていませんでした。
- こうした先行研究を踏まえて、私はチンパンジーを除く5種の昼行性霊長類のうち、アカコロブスと同じコロブス属のアビシニアコロブスを観察することにした。カリンズでは、チンパンジーによるアビシニアコロブスの肉食の証拠は得られていなかった。しかしこの種は、同じウガンダのキバレ森林やブドンゴ森林でチンパンジーに食べられており、また同じコロブス属ということでアカコロブスとの行動の比較が容易にできるだろうと考えたからである。
- 下の写真は、ロエストモンキーです。
- 調査日数の約半数をアビシニアコロブスの観察にあて、9頭(おとな雄2頭、おとな雌4頭、子ども3頭)からなる群れを追跡しました。左の写真は、樹上で休息するこの群れのおとな雄です。この群れの遊動域の大きさは約25ヘクタール、調査期間中に観察した食物は38種49品目(果実9種、葉33種、花5種、葉柄1種、地衣類1種)ありました。
- 残りの日数はチンパンジーを追跡し、採食行動や遊動パターンのデータを収集しました。またチンパンジーの糞を採集し、その内容物の分析も行いました。
- こうした観察の過程で、1999年11月13日にチンパンジーが観察対象のコロブスの群れを襲う場面を幸運にも観察しましたた。この日のチンパンジーのパーティ構成は、おとな雄5頭、わかもの雄2頭、おとな雌4頭、子ども1頭、赤ん坊1頭の合計13頭でした。
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