コロブスを襲うチンパンジー (4/5)
4.襲撃場面
- 左の写真は、アビシニアコロブスのおとな雄とアカオザルのおとな雄が、同じ木にいる場面です。このように、カリンズのアビシニアコロブスは、しばしば他のサルと同じ木で採食や休息をします。
- 左の写真は、パラソルツリーの木に座っているチンパンジーのわかものです。カリンズの植生の特徴の一つは、このパラソルツリーが優先した森が存在することです。観察対象のコロブスの群れは、こうした地域に生息しています。
- 11月13日はは、7時33分に観察対象のコロブスの群れを発見し追跡を開始しました。13時07分に、この日初めてチンパンジーが遠くで鳴いているのを聞きました。23分には、群れから200メートルほどのところからチンパンジーの声が再び聞こえました。それまで休息していた群れは、30分にチンパンジーの声と反対方向へゆっくりと移動を始め、そのため、チンパンジーとの距離は200メートル以上に開きました。
- 14時44分にチンパンジーの声が再び200メートルほどのところから聞こえましたた。そして57分には、1頭のチンパンジーの声が、100メートルほどのところから聞こえました。15時01分になると、コロブスのいる木のすぐ近くでチンパンジー2〜3頭の声がしました。すぐにチンパンジーのおとな1頭が、多くのコロブスのいる木の真下を通り過ぎていきました。03分には、チンパンジーのおとな1頭が、パント・フートを上げながら近づいてきました。そしてコロブスから15メートルほど離れた木に登り、高さ1.5メートルのところに座りました。06分には、別のチンパンジーのおとな雄1頭が、コロブスから30メートル離れた木に登りました。その2分後、03分に現れたチンパンジーが再びパント・フートを鳴きました。09分には、チンパンジーの2〜3歳の子どもが、多くのコロブスのいる木の高さ6〜7メートルまで登り、コロブスの方を見上げました。すぐにこの子どもは木を降り、地上に座りました。チンパンジーのおとな雄1頭がコロブスのおとな雄1頭だけがいるパラソルツリーの木に登り、高さ6メートルのところに座りました。これでコロブスの周辺には、4頭のチンパンジーが現れたことになりました。
- 15時14分に、パラソルツリーの木にいたコロブスのおとな雄が、声を上げずに走ってこの木と他のコロブスがいる隣の木の間を行ったり来たりしました。この木にいたチンパンジーのおとな雄は、コロブスを見上げるのみでした。すぐに別のチンパンジーのおとな雄がこの木に登り、高さ8メートルに座りました。コロブスのおとな雄も2メートル程登り、高さ14メートルのところに座りました。20分には、20メートル東方よりチンパンジー2〜3頭の声がしました。パラソルツリーにいたコロブスのおとな雄が再び声を上げずに走り回りました。すると突然、チンパンジー10頭近くがワー・コールを鳴きました。続いて、西10メートルから、チンパンジーが板根を叩く音が聞こえました。26分にチンパンジーのわかもの雄1頭が、コロブスのいた木の南10メートルのパラソルツリーの木に登りました。このときコロブスの群れの周りには、10頭以上のチンパンジーがいたと思われます。
- 15時27分には、コロブスのおとな雄と同じ木にいたチンパンジーおとな雄が、1メートルほど登りました。この木にいたコロブスのおとな雄は、4メートル木を降りチンパンジーに近づきました。するとチンパンジーのおとな雄はさらに木を登りました。チンパンジーのおとな雄1頭が、多くのコロブスがいる木に登りました。別のチンパンジーのおとな雄1頭が、コロブスのおとな雄がいるパラソルツリーの木に登りました。南10メートルのパラソルツリーの木にいたチンパンジーのわかもの雄が、樹上を移動してコロブスの多くがいる木に来ました。すぐに、これら4頭を含め周辺のチンパンジー10頭程度が再びワー・コールを鳴きました。すると狩猟の始まりを察知したのか、コロブスのおとな雌1頭が走って樹上を移動し、この場面から立ち去りました。隣の木にいたチンパンジーのおとな雄が樹上を走って移動し、多くのコロブスがいる木に来てコロブスのおとな1頭を追いました。いよいよ狩猟の始まりです。追われたコロブスは地上へ飛び降りました。隣の木にいたコロブスのおとな雄1頭が、「ゴ、ゴ、ゴ」と鳴きながらこの木に来て、チンパンジーに反撃しました。この木にいた別のコロブスのおとな雄1頭とおとな雌1頭も、チンパンジーのおとな雄1頭を追いました。声を出したコロブスのおとな雄以外の個体はそのまま木を降りて地上を移動し立ち去りました
- 15時29分には、コロブスに追われたチンパンジーのおとな雄1頭が木を降りました。30分、複数のチンパンジーがまたワー・コールを鳴きました。チンパンジーのおとな雄1頭がコロブスのおとな雄1頭がいるパラソルツリーの木に登りました。31分に、このコロブスのおとな雄1頭が、隣の木に移動し、高さ8メートルに座りました。チンパンジーのおとな雄4頭が、このコロブスを取り囲むようにこの木と隣の木に座っていました。32分、チンパンジーがまたワー・コールを鳴きました。コロブスを取り囲むようにしていたチンパンジーが、樹上を走り出しました。このため、この木の枝が音を立てて折れ、この音に驚いたのか、チンパンジー1頭が悲鳴を上げました。コロブスのおとな雄が木を降りて地上を走って行きました。一部のチンパンジーも木を降り、このコロブスを追いました。他に数頭のコロブスが急いで樹上を移動して行きました。36分、パラソルツリーの木にいたチンパンジーのおとな雌と赤ん坊が木を降りました。2分後、枝の折れた木の隣の木にコロブスのおとな1頭が座りました。この周辺に残ったコロブスは、この1頭だけになっていました。このコロブスから5メートルの木に、チンパンジーのおとな雄1頭が座りました。別のチンパンジーのおとな雄1頭が枝の折れた木に座っていました。この2頭以外にチンパンジーの姿は見えなくなっていました。狩猟は失敗に終わったのか、チンパンジーは平静を取り戻していました。
- 15時39分に1頭だけ残っていたコロブスのおとなが、樹上をゆっくり移動して観察者の視界外へ立ち去りました。これでコロブスは1頭もいなくなりました。42分、チンパンジー1頭が、樹上を移動して観察者の視界外へ立ち去りました。ここから南15メートルのパラソルツリーの木で、チンパンジーのおとな雄1頭が果実を採食しているのを見つけました。46分、枝の折れた木にいたチンパンジーのおとな雄1頭が、隣のパラソルツリーの木に移動し、果実の採食を始めました。54分、200メートル以上離れたところからチンパンジーの声が聞こえました。多くのチンパンジーは移動してしまったようでした。この声に応えるように、パラソルツリーの木で果実を採食していたチンパンジーのおとな雄1頭が木を降りて移動しました。もう1頭もそれに続きました。これでチンパンジーも1頭もいなくなりました。そこで、チンパンジーを追跡しました。
- 16時02分、先ほどから300〜400メートル北東の場所でチンパンジーを発見しました。09分には、多くのチンパンジーがイチジクの大木で果実の採食を始めました。左の写真は、イチジクの果実を食べるこどものチンパンジーです。この周辺には、チンパンジーのおとな雄5頭、わかもの雄2頭、おとな雌2頭がいました。コロブスを持っている個体は見かけませんでした。30分にチンパンジーの観察を終了しました。15時39分以降、コロブスはまったく見かけませんでした。
- この出来事があった翌々日の11月15日に観察対象のコロブスの群れを観察したときには、群れの個体数や構成に変化はありませんでした。そこで13日にチンパンジーに食べられた個体はいなかったと考えられます。
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